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カーペンターズには「白」というキーワードがあるように思う。
60年代、激化し泥沼化するベトナム戦争の空気を感じながら人々は生きていた。ヒッピー・ムーヴメントが起こり、70年代にかけて、若者達は世界の変革を願っていた。しかし、愛と平和を口々に語りながら、その反面、彼らはドラッグを使い、酒と性に溺れていた。
そんな時代にカーペンターズは登場した。
「感傷的で古くさいラヴ・ソングを歌い、タバコもやらず麻薬もやらず、※プレッピーのような印象を与える」カーペンターズは、当時のトレンドからおよそかけはなれたものだった。彼らと契約したA&Mレコードのプロデューサー、ハーブ・アルパートには冷ややかな嘲笑が投げかけられたという(レイ・コールマン著「カレン・カーペンター〜栄光と悲劇の物語」)。
時代を知る音楽評論家は回想する。「アメリカン・ポップスは、黒人音楽がベースになっている。必ずブラックなテイストがどこかにあるのだが、カーペンターズはそれをまったく持たずに現れた。「ブラック」と対比させて言うなら、彼らの音楽は「真っ白」だった」。
白人によって生み出された、白人が歌うアメリカン・ポップス。そして、麻薬などとは対極にある、健全な家庭で育った仲の好い兄妹デュオの清潔感。
二人がカリフォルニアの出身ということも、このキーワードのカウントに入れていいだろう。誰もが憧れる西海岸の、ふりそそぐ太陽の光と開放的な街並みのイメージはまさに「まばゆい白」だ。
カーペンターズの音は、幼い頃からピアノの才能を発揮し、州立大学で音楽を学んだ兄リチャードによって作られた。
クラシックに通じる編曲と音楽理論をポップスに融合させ、彼らは唯一無二のカーペンターズ・サウンドを作り出した。
その最大の特徴は、「鉄壁」と称されるハーモニーにある。多重録音されたそのバック・コーラスは、豊かな層を成しながら、しかし決して主張せず、楽曲に深みのある表情を加えている。
そして、それは妹カレンの天才的な歌唱力とあいまって最高の効果を発揮し、カーペンターズにしか出せない独自のサウンドが出来上がる。
他にカーペンターズのキーワード「白」を表すものには「正しさ」がある。
カレンの歌は常に完璧であり、それは音程にも発声にもそうであった。どんなメロディでも正しく音をひろい、本番の2〜3分前まで横になって休んでいてもステージではレコードと同じ声が出せた。また、カヴァーの際には、原曲の下品な単語や間違った文法を直して歌っている。
その辺りの、聴き手に与える安心感も彼らの人気の要素といえるだろう。
ベット・ミドラーのカヴァー(元はリタ・クーリッジをフィーチャーした曲)である、グルーピーがお目当てのロック歌手と念願の関係を持ち、その後も想いを募らせるという内容の曲でさえ、カレンが歌うとピュアでせつない恋の物語になった。ちなみに、カーペンターズが歌ったこの曲はミリオン・セラーとなり、日本で広くカーペンターズの名を知らしめるきっかけになった。
摂食障害に陥ったカレンのこだわりや繊細さ、はかなさにも「白」というイメージはつきまとう。
彼らのサウンドの清潔感とやわらかさ、美しさ、人としての性質の真面目さや緻密さ、センシティブな感性は、日本人には特に理解しやすく親しみの持てるものだ。カーペンターズの人気は根強く、カレンが旅立って25年経つ現在でも、テレビやラジオ、街角でその曲を聴かない日はない。
彼らの音楽は普遍的であり、永遠だ。
「永遠」という言葉に「白」をイメージするのは私だけであろうか。
※有名大学進学を目的とした名門私立学校に通学している良家の子息、裕福な家庭のお坊ちゃん、お嬢ちゃんの意味。対語は、反戦主義を唱えるイッピー(ヒッピー族)。
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